関節の可動域制限とは、
筋萎縮や関節構造体の器質的変化や神経麻痺などの機能的変化などの原因によって、関節の動きが妨げられている状態です。
可動域制限の原因と測定項目
筋萎縮や関節構造体の器質的変化(物理的な損傷)の場合で他動運動と自動運動ともに可動域制限がある場合の他、神経麻痺などの機能的変化が原因で自動運動にのみ可動域制限がある場合などがある。
可動域制限の原因には、骨折の予後不良、神経切断などの原因があります。
具体的には鎖骨骨折、肩甲骨骨折、肩鎖関節の脱臼・骨折、腱板断裂、座骨骨折、股関節骨折、骨盤骨折、膝蓋骨骨折、大腿骨骨折、各部位の骨挫傷、剝離骨折、開放骨折、粉砕骨折や、腱断裂、偽関節などがあります。
また、神経切断等による麻痺症状が原因の場合もあります。
関節可動域の測定要領
関節可動域の制限の原因
関節の機能障害は、関節そのものの器質的損傷によるほか、各種の原因で起こり得るから、その原因を無視して機械的に角度を測定しでも、労働能力の低下の程度を判定する資料とすることはできない。
器質的変化と機能的変化
したがって、測定を行う前にその障害の原因を明らかにしておく必要がある。関節角度の制限の原因を大別すれば、器質的変化によるものと機能的変化によるものとに区分することができる。
器質的変化の種類 例えば、骨折
さらに、 器質的変化によるもののうちには、 関節それ自体の破壊や強直によるもののほかに、関節外の軟部組織の変化によるもの(例えば、阻血性拘縮〉がある。
機能的変化の種類 例えば、神経切断
機能的変化によるものには、神経麻庫、疼痛、緊張によるもの等があるので、特に機能的変化によるものの場合には、その原因を調べ、症状に応じて測定方法等に、後述するとおり、考慮を払わなければならない。 ※障害認定必携 一般財団法人労災サポートセンター
関節可動域の測定値について
日本整形外科学会及び日本リハピリテー ション医学会により決定された「関節可動域表示ならびに測定法」に従う。
原則として、他動運動による測定値によることとするが、他動運動による測定値を採用することが適切でないものについては、自動運動による測定値を参考として、障害の認定を行う必要がある。
他動運動による測定値を採用することが適切でないものとは、例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となり、他動では関節が可動するが、自動では可動できない場合や、 関節を可動させるとがまんできない程度の痛みが生じるために自動では可動できないと医学的に判断される場合等をいう。
後遺障害診断書作成にあたっての注意点
測定器具の使用
測定箇所によっては、目視によると正確な角度の測定が難しいことなどから、測定医師においては、角度計(ゴニオメーター)を使用することになっている。
被測定者の姿勢と肢位
例えば、足首の可動域制限の測定においては、座位において膝関節を90度に曲げるなど、測定箇所に応じて、適切な姿勢を取り、測定の基準点を定める必要がある。
自動運動の記載
末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となり、他動では関節が可動するが、自動では可動できない場合や、関節を可動させるとがまんできない程度の痛みが生じるために自動では可動できないと医学的に判断される場合等は、必ず自動運動の測定の記載をしてもらう。