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自動車損害賠償保障法3条

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平成2年7月18日東京高等裁判所判決の解説

 平成2年7月18日東京高等裁判所判決(以下,「平成2年高裁判決」という。)は,信号機の設置してある交差点での衝突事故において被害者(控訴人)と加害者(被控訴人)のどちらが赤信号で発進又は交差点に進入したのかが認定困難な事案において,複数いる目撃証人のうち加害者の主張に沿う供述をした証人(以下,「原審証人」という。)の供述の信用性を評価して加害者の無過失を認定した原審を取り消し,原審証人の供述のうち,信号の確認について確実性に乏しいきらいがあること,加害者の行動について異なる供述をした他の目撃証人の供述も無視できないことから,原審証人の供述は無過失の立証の決め手にはならないものとして,以下のように判示した。
 「本件においては,被控訴人の過失の証明はない。しかしまた,すべての証拠を検討しても,A車が赤信号で発進した(つまり被控訴人は無過失であった)と認めるについての合理的疑いも解消し得ず,被控訴人の無過失の証明もないということになる。もともと決定的な証拠に乏しい不法行為の事案において,無過失の証明を完全に求めることは,難きを強いると思われるかもしれない。しかし,自動車損害賠償保障法3条が被害者の救済を重視する趣旨に出るものであることを考えれば,本件において被控訴人の無過失の証明がないとされるのもやむを得ないところである。」
 以上のような判示によれば,仮に被害者と加害者のどちらが赤信号で本件交差点に進入したのかが認定困難である場合には,加害者側の主張に沿う目撃者供述が存在する場合であっても,目撃者供述の信用性が高く評価することのできないものである場合には自動車損害賠償保障法3条但書の免責事由を立証できなかったとして,同条に基づく責任を負うこととなる。

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